ザ・ビートルズは最後の楽曲“Now And Then”がリリースされることを発表して、赤盤と青盤のエクスパンデッド・エディションがリリースされることも決定している。
ポール・マッカートニーとリンゴ・スターはザ・ビートルズの4人が参加した最後の曲をAIの力を借りて完成させたことを明らかにしていた。
オレンジと白のカセットテープの動画や写真がソーシャル・メディアで投稿され、リヴァプールではバンドにちなんだ場所で映像の投影が行われるなか、ザ・ビートルズは“Now And Then”の詳細を発表している。
ジョン・レノンは“Now And Then”のデモ音源をピアノとヴォーカルだけで70年代にニューヨークのダコタの自宅で制作しており、彼の死後にオノ・ヨーコはこの音源を、90年代の『アンソロジー』プロジェクトで完成して、リリースされた“Free As A Bird”や“Real Love”と共に1994年にポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターに渡している。
3人はジェフ・リンのプロデュースの下、新しいパートをレコーディングして“Now And Then”のラフ・ミックスを完成させたが、ジョン・レノンのヴォーカルとピアノを分離できず、クリアなミックスができないという「技術的な限界」が残ることとなった。
2021年になってピーター・ジャクソンはドキュメンタリー『ゲット・バック』でウィングナット・フィルムスのMALというオーディオ・テクノロジーを採用しており、これはモノの音源から楽器とヴォーカル、ホーンや個々人の声を分離させられるもので、2022年の『リボルバー』のリミックスでも採用されている。その後、この技術はジョン・レノンのヴォーカルとピアノをクリアにするために“Now And Then”のデモ音源にも使われることになった。
「ジョンの声が、とてもクリアに聴こえる」とポール・マッカートニーは語っている。「すごく感動的だよ。全員で演奏していて、正真正銘のザ・ビートルズの音源だ。2023年になってもザ・ビートルズの曲に取り組んで、公には聴かれたことのない新曲をリリースしようとしているなんて、すごいことだと思うよ」
リンゴ・スターは次のように続けている。「彼が部屋に戻ってくることに最も近いことだったから、僕ら全員にとってとても感動的なことだった。ジョンがそこにいるみたいで、ありえないよ」
音源ではジョージ・ハリスンが1995年にレコーディングしたアコースティック/エレクトリックのギター・パート、リンゴ・スターによる新たなドラムとバッキング・ヴォーカルの音源、ポールによる新たなベースとバッキング・ヴォーカルの音源が使われており、ジョージ・ハリスン風のスライド・ギターとジョン・レノンの作曲を下にしたピアノも加えられている。
ジャイルズ・マーティン、ポール&ベン・フォスターがストリングスのアレンジを監修し、ポール・マッカートニーとジャイルズ・マーティンは“Here, There And Everywhere”、“Eleanor Rigby”、“Because”のバッキング・ヴォーカルを追加している。プロデュースはポール・マッカートニーとジャイルズ・マーティンが務め、ミックスはスパイク・ステントが担当している。
「1995年、スタジオでこの曲に数日間取り組んだ後、ジョージ・ハリスンはデモの技術的な問題を克服できないと感じ、この曲を十分な水準で仕上げることは不可能だと結論づけました」とオリヴィア・ハリスンは述べている。「彼が今も生きていたら、ダーニと私は彼が心からポールとリンゴと一緒に“Now And Then”のレコーディングを完成させていたことが分かります」
ジョン・レノンの息子のショーン・レノンは次のように続けている。「父が亡くなって何年も経ってから、一緒にやっている曲を聴くのは心が動かされます。これは私の父、ポール、ジョージ、リンゴが一緒に作った最後の曲です。タイムカプセルのようで、すべてが運命的に感じます」
“Now And Then”は日本時間11月2日22時にデビュー・シングル“Love Me Do”との両A面でリリースされる。
“Now And Then”のミュージック・ビデオは11月3日に公開される予定で、オリヴァー・マレーが手掛けた12分間のドキュメンタリー『Now And Then:ザ・ラスト・ビートルズ・ソング』は11月2日午前3時30分に公開される。
翌週の11月10日には赤盤と青盤のエクスパンデッド・エディションがリリースされることも決定している。
赤盤と青盤合わせて“Love Me Do”から“Now And Then”まで75曲が収録され、赤盤に12曲、青盤に9曲、計21曲が追加される。近年のステレオ/ドルビー・ミックスとジャイルズ・マーティンとサム・オケルがウィングナット・フィルムスのAI技術を使った新たなミックスが採用されている。また、どちらのコレクションにもジョン・ハリスがエッセイを寄せる形となる。